たしかな愛

半分くらいはフィクションです。

2021-01-01から1年間の記事一覧

300円で廻る地球

コインランドリーで知らない人の生活がまわるのを見ていた。かなしいことがあると、決まっていつもここに来る。私には洗える物も特に無いから、代わりに、誰かが何かを洗うのを隅のベンチに腰掛けてぼんやり眺める。 就活生めいた男の子(ワイシャツとハンカ…

やさしく象にふまれてしまう

此処はずいぶん寂しいところ。半年前、私を此処に連れ戻した貴方も再び姿を晦ましてしまったので、私ももう十分なのではないかしら、などと思っています。 恐らく貴方は私の事を知らないでしょうし、私も貴方のことを知りません。しかし、私を此処に留まらせ…

寝不足にピンク

通知音で目が醒めて、開く画面はまぼろしだった。らしくないねって笑った君の目の奥のピンクが爪先に纏わりついたまま剥がれない。 染まりきってさよならって、どうせならもっとうまく笑えたらよかった。教えてもらった変な名前のバンドを、やっぱり好きにな…

愛を知らない僕たちは

「じゃあ、君はまだ知らないんだね、愛を」軽やかに3杯目のビールを飲み干した彼が言う。「あ、すみません、ビールもう1杯お願いします」と店員に呼びかける横顔が妙に大人びていて、私は思わず感心してしまう。彼とは小学生の頃からの幼なじみで、会うのは3…

ラブソングあげる

2021.01.30コーヒー飲みに行きたいなんてただの口実だった。 本当は君の住む街を見てみたかっただけで、でもきっとそんな下心、君にはバレバレだっただろう。腹心の友との逢瀬はいつだって最高だ。 昼過ぎ、君の家の最寄駅で待ち合わせて、黄色いコートを見…

迷わずまっすぐ帰ってきてね

Google マップに頼らず歩ける人が好きだ。 「こっちだよ」と手をひかれた日には、軽率に「結婚しよう…?」などと思ってしまう。 おそらくは私が救いようのない方向音痴であるが故の生存本能みたいなものだと思う。今日だって、珍しく早起きして家から歩いて2…