たしかな愛

半分くらいはフィクションです。

翳りゆく部屋

朝5時から2度寝3度寝を繰り返し、もう何度寝かわからなくなったころには日が暮れていた。

重たい睫毛をどうにか持ち上げて、半分部屋着のまま、コンビニで厚切りのチョコレートケーキ(たぶん4cmくらいある)を買う。

YouTubeラーメンズを眺めながら生暖かいケーキを咀嚼する。ひたすら甘いだけのチョコレートケーキはさびしい。

 

半年前まで何もなかった部屋の中は、ちかくの海で拾ったひよこの形の石だとか、とおい国から届いたポストカード(あの子が選んだのはやっぱり夜の写真だった)だとか、使いかけのシャボン液だとか、開けられないままのプレゼントだとかで満たされつつある。

どんなに気をつけていても捨てられないものが増えてゆくので、わたしはときどき不安になる。

 

乾いたケーキを100円のコーヒーで流し込み、PCの電源を落とすと、わたしはいよいよ真っ暗闇のなかにすっぽりと包み込まれてしまう。

輪郭を失った執着の気配だけがする部屋の中、行き場のない想いばかりが膨れ上がってゆくようで、わたしは何時もの通り途方に暮れる。

時々思い出した様に明滅する携帯のディスプレイだけが恐らくわたしをここに繋ぎ止めていて、だからいつ消えてしまっても構わないのだ、ほんとうは。

 

それを認めたくないだけの指先が、深い海の中を漂っている。もうずっと長いこと、今も。