昼下がり寝ぼけ眼の遅桜
スカートにはらむ春風君を待つ
秘密だよつつじの蜜を吸ったこと
腕伸ばす列車の窓の夏の月
白シャツを踊らすコインランドリー
甘やかに香りくちなし気づけ馬鹿
達磨さん転べば迫り来る雷雨
驟雨なり涙閉じ込めたる絵本
五月雨に洗われ生まれたての街
雷の過ぎてふたたび青い空
今度こそ愛せるはずさ薔薇の棘
紫陽花をさした黒髪夜を駆ける
きらきらと薄紙すり抜ける金魚
電車よりひまわり少女躍り出る
海色に透ける素足の放つ熱
暑き故壁に投げつけたリモコン
指先が溶け出してゆく熱帯夜
蝉時雨録りそびれたまま最終話
グッド・バイ!