たしかな愛

半分くらいはフィクションです。

plenty

中学生だった。いつもplentyを聴いていた。 
「蒼き日々」を聴きながらコンビニ袋片手に歩いた国道28号線。
「風の吹く町」を口ずさみながら部屋の窓から眺めた工事現場。(あの家からは壊れた信号機や鉄パイプなんかが転がっているのがよく見えた)
フローリングの上に寝転んでぼんやり聴いた「普通の生活」。揺れるカーテン。
何もかも手に取るように思い出せる。
「おりこうさん」を聴きながら参考書の埋まらない解答欄を前に途方に暮れていたことも、夜行バスの中ひとり「ひとつ、さよなら。」を聴きながら通り過ぎてゆく街灯を数えたことも、何もかも。

音楽は記憶と共に身体に刻まれてゆくものらしい。だからあの頃聴いていた音楽はきっとずっと忘れない。もし忘れてしまっても、再生ボタンひとつできっとすべてを思い出せる。

 

 plenty最後のライブは雨だった。
レインコートで溢れかえる会場。誰もが雨の中ただ一点を見つめて立ち尽くしていた。歌声と雨音が溶け合い、降り注ぎ、優しく身体を包み込んでいく。
切なくて愛しくてたまらなかった。 
plentyはわたしにとって間違いなく特別なバンドだったし、言ってしまえば青春だった。
始めるための終わりだとしても別れはやっぱり寂しいし、今だって信じたくないけれど、全ての想いは「またね」に託して、下手くそだけど手を振るよ、
ありがとう最高でした。

終わったこと、無くしたもの、居なくなった人、帰れない場所。数え上げればきりがないけど、見知らぬ宇宙のどこかでうっかり再び出会えるその日を、信じて僕は待ち続けるさ

それじゃあね

またね